

樫尾:3年間で営業利益率を倍にするための新たな事業展開として考えているも
のに、"人材開発"ビジネスがあります。カシオグループには、技術、ブランド力、世界中にある拠点など、約60年間培ってきた資産がある。それらを生かせ
ば、これまでにない人材開発事業ができるはずです。
人間はいくらでも成長できる可能性をもっています。これは私自身の経験から言えることですが、この年齢になっても仕事をしていて新たに気付くことがまだ
まだあるのです。新たな気付きを得るということは、それまでの自分より成長している証拠。その実体験を生かして、どうにか人材開発をシステム化できないか
と考えています。
佐々木:「これはできない」と、自分で制限をかけてしまったり、あるいは企業が邪魔をしたり。出る杭を打つ人もいますからね。
樫尾:いるんですよね、会社のなかにもそういう人が。私には責任者として、会社の業績を伸ばし、みんなを幸福にする義務があります。業績が伸びない以上、社員の幸福が得られるはずがありません。この考えは、私の経営の原点でもあります。
しかし、これだけの資産があるのに、業績が伸びず、人材開発もできないというのは、経営のやり方を間違えているから。各事業部の責任もそこにあると思っています。
先日もこんなことがありました。今は円安のため、国内の営業は赤字です。我々は、それをカバーするための商品を考えなければいけません。ところが、営業
戦略会議で「これだけの円安ならしょうがないんじゃないですか」という発言が出てきたのです。これに対し私は、「しょうがないでは済まされない!」と喧々
囂々しましたよ。
佐々木:商品でたとえたら、「○○の商品は機能がいいから勝てません」と、戦わずに終わってしまうということですよね。そのような社長の考え方と姿勢があるから、これまで直面した数々の苦難にも果敢に立ち向かい、乗り越えてこられたのだと思います。
樫尾:スポーツの世界では、世界水準を超えなければ有名にはなれません。ビジネ スも同じ。最終的には世界水準を超えたところが勝つのです。今までは国内のメーカー同士で競争していましたが、これからはますます世界に目を向けなければ いけません。ですから、世界水準を超える人材開発が必要なのです。社員全員のレベルが世界の業界水準を超えたら、会社は安泰でしょう。